http://www.nicovideo.jp/watch/sm7203430
ニコ動より全曲↑

シュニトケのチェロ協奏曲一番に恋したのならば、この曲も聴かねばならない。
心臓を患い、作曲者が倒れた1988年を境にして、曲の包する暗黒は深まる一方だった。
この曲は、病的な旋律が死の淵を彷徨い、届かぬ光を求め、果てる一連の物語である。
しかしそれだけでは終わらない。この曲は、シュニトケにしては珍しく現代的なのだ。
一番が、新ロマン派の代名詞のように評されることもあるが、二番の晦渋さには理解に苦労する向きもあろう。
短い一楽章、序奏を経て、流れ込む二楽章。抽象的なメロディーと構成とは、シュニトケの諸作品の中でも異様に思える。
金管の高らかなファンファーレを美しく縁取るチェロ、迷路に迷ったような不可思議な音群。
そして終楽章、実に16分を要するこの楽章が、白眉である。
彼の作った映画音楽、「苦悶」からの引用で始まるこの楽章は、調性と無調性が交差し、
秩序は乱れ、安定性は崩れ、音響的に輪郭が複雑で、かつロマン的に徐々に高まっていくというまさに現代性とロマン性の融合をみる。

ロストロポーヴィチ&小澤征爾/ロンドン交響楽団 1991

初演者ロストロポーヴィチによる歴史的録音という意義以外には、魅力のない盤。まずロストロのチェロだが、
イヴァーシキンほどの突進力、鋭さ、攻撃力がないし、かといってセディーンほどの内向性、静寂、瞑想もない。
かつてのロストロは凄かったことを認めつつ、ここではすっかり年老いて力を失った人間の悲しさ以外に聴くべきものはない。
しかし、テクニックは衰えない。四楽章の超絶技巧を鮮やかに操るチェロには舌を巻く。
そしてオケは、もっと酷い。小澤は音楽を刹那的にしか捉えておらず、息が短く、スケールも伸び悩み。
壮絶な音響で魅せず、聴き入るべき静寂を湛えない。終始大人しく、オケの見せ場はない。
ただ、終楽章だけは、このアプローチもありなのか、とも思わせる。解釈が現代的な分、この晦渋な音楽に新たな光を照射しているのも確か。

イヴァーシキン&ポリャンスキー/RSSO

イヴァーシキンのチェロに圧倒される。テクニック面では、細かいパッセージのどの部分も完全に弾き切る。
全体的に速い演奏だが、音の一つ一つに表情がこもり、表現はダイナミックで、狂ったように突き進む。
漸次的に微妙な音色の変化を聴かせるチェロは、人間がいて、チェロをもつ手があって…という人と楽器との媒介性を意識させない。
チェロが直接心と繋がってるかの如くだ。
音は野太く、しかも鋭く、機動力があり、深みもあり、力強く、柔軟で、迫力がある。これこそ、理想のチェロだ、とすら言える。
しかも音色が美しいときたら、もう言うことはない。ポリャンスキーもいつもの鈍感さはあまりなく、なんとか満足できるレベルには
達している。
旋律の線より、響きの空間性を意識したオケは、他の曲では鈍くていらいらするのだが、ここでは成功している、といってよい。

セディーン&マルキツ/MSY

オケとチェロの幸福な融合が聴ける。音量バランスがとても良い。セディーンのチェロは、イヴァーシキンと比べると酷なのだが、
やや積極性を欠く。だが、この曲に積極性が必要だろうか?必要なのは、瞑想と、黙認と、苦悩と、堪え忍ぶ精神だ。
それをセディーンは見事に表現しきる。超絶技巧を聴かせるチェロではないし、また線も細めだが、宙釣りになったようなチェロ、
苦しみの吐露、空間を生み、そことの対比で、旋律を奏でるチェロは、この曲と非常に合っている。明らかに、同じ奏者のチェロ協奏曲一番より
素晴らしい出来だ。加えて、マルキツ率いるオケのなんたる素晴らしさ。響きは明晰で、しかも金管の伸びる音色の扱いは巨匠風。
四楽章の押し寄せる巨大な悲愴は、ポリャンスキーなどとは比べ物にならない。
お寄せいただいたコメント
暗ヲ   2010/01/17(Sun) 05:05
うーん、現代音楽は苦手なので、シュニトケも聴いてませんが、そんなこと関係なく、kyrieさんの文章に魅せられちゃいますね。
ロストロ小澤コンビで聴いているのはドヴォルザークのチェロコンチェルトくらいでしょうか。
小澤さんはしばらくお休みとのこと、ご快復をお祈りしたいと思います。
kyrie  2010/01/17(Sun) 07:55
>暗ヲさま

現代音楽は苦手でも、シュニトケなら入りやすいかと思います。とにかくドラマティック!
ドヴォコンはロストロ何度も録音してますよね、どれがベストなんでしょう??
小澤さんは心配ですね。ここでは散々に評しましたが、同じ日本人として、
また日本の誇り、財産として、さらに活躍してほしいところです。
今はゆっくり病状がご快復するのを待つのみ…
みそフェンリル  2010/01/23(Sat) 17:11
ニコ動にて聴きましたが、すごく緊張感があって良いです。
多分チェンバーロックの連中の影響元はこれかも。
kyrie  2010/01/24(Sun) 22:56
>みそさん

負の音楽を好まれるみそさんなら、絶対好きになると思いますよ!
シュニトケはなぜかニコ動でうpされまくってるんで、よかったら他の作品もどぞ。
チェンバーロックがなんのことかは分りませんが、シュニトケは「レクイエム」で
エレキギターのパートを入れたり、合奏協奏曲第二番でドラムを入れたり、と、
やりたい放題やってます(笑)
この記事にコメントをお寄せください
ザの人」に登録すると、この記事にコメントを寄せることができます。
登録済みの方は、ログインフォームからログインを行い、コメントをお寄せください。

→新規登録はこちら
→ログインはこちら